スピーカーの比較

YAMAHA NS-10Mには周波数特性が明記されています。それがこのスピーカーの仕様なのですから、まずはそれを踏まえて鳴らしてみましょうか。

4個の人気のスピーカーの比較です。みなそれぞれに長所短所がありますから、それを理解できたらうまく使いこなせるようになるに違いありませんね。

周波数特性

スピーカーの周波数特性も測定して見たいと思います。音質はどのように周波数特性に現れているでしょうか。

 

 

音響攻略一口メモ

低ひずみ、Fレンジ、音像定位、立ち上がりなどの点で、すべて完璧なスピーカーは現在の技術ではできないのですから、聴く音楽に合わせて選ぶことが必要ということになりますね。

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小型スピーカーの名機の音質比較

YAMAHA NS-10M 、VICTOR SX-F3、DENON SC-E535、ONKYO D-202AXの音質を比較してみました。

音質比較のオーディオシステムは次の通りです。
【1】アンプ:TA2020(ZERO TA2020 及び SA-36A)
【2】PC:デジタルオーディオボード ONKYO SE-90PCI
【3】CDプレーヤー:KENWOOD DPF-7002(電解コンデンサ及びショットキバリアダイオード交換済み)
【4】YAMAHA NS-10M PROイコライザー:ONKYO EQ-211M
YAMAHA NS-10Mのみイコライザーで周波数特性を調整しますが、他のスピーカーではイコライザーは使いませんでした。(ONKYO EQ-211M はYahooオークションで2,000円ぐらいで手に入るかも知れません。)

※YAMAHA NS-10Mを鳴らすときのイコライザー(ONKYO EQ-211M)の設定を表にしてみました。NS-10Mの周波数特性はスピーカーの後ろについている周波数特性のグラフから読み取れます(これがこのスピーカーの仕様ですね)。できるだけフラットになるように設定しますとバランスの取れた聴きやすいスピーカーに生まれ変わります。音質比較はこの設定で行います。
64Hz 160Hz 400Hz 1KHz 1.5KHz 2.5KHz 3KHz 6.3KHz 16KHz
NS-10Mの
周波数特性
83dB 88dB 89dB 92dB 92dB 90dB 91dB 89dB 87dB
イコライザー
の設定
+6dB +2dB ±0dB -2dB -2dB ±0dB +2dB
調整後の値
(合計)
89dB 90dB 89dB 90dB 90dB 88dB 90dB 89dB 89dB

※いろいろなジャンルのCDで音質を比較してみたいと思います。もちろん、あくまでも特定の環境での個人的な感想です。いろいろな時に何度も聴きなおして修正しています。
比較ジャンル YAMAHA
NS-10M
DENON
SC-E535
Victor
SX-F3
ONKYO
D-202AX
  YAMAHA NS-10M PRO DENON SC-E535 Victor SX-F3 ONKYO D-202AX
ボーカル イコライザーで調整後ですが、声がきわめてナチュラルです。 すこし声が引っ込む感じになりますが、全体の雰囲気はよいです。 声が張り出すというより、あたたかく響きます。 声が張り出して元気になります。
交響曲 低域が薄くなりますが、引き締まった演奏が楽しめます。 厚みと広がりのある交響曲が聴けます。 中域が響く交響曲になります。 中域が張り出した感じになります。
ピアノ曲 ナチュラルな演奏が楽しめます。 とてもソフトなピアノ演奏が楽しめます。 ピアノの音が響いて聞こえます。 やはり元気な演奏になりますね。
バイオリン曲 ナチュラルな演奏が楽しめます。 広がりのあるバイオリン演奏が楽しめます。 バイオリンの音が響いて聞こえます。 やはり元気な演奏になりますね。
ジャズ 少し固めですが、ナチュラルな演奏が楽しめます。 低音がずしんとくるジャズが楽しめます。 温かなジャズが楽しめると思います。 やはり元気な明るいジャズになりますね。
映画音楽 少し固めですが、ナチュラルな演奏が楽しめます。 広がりのある豊かな音楽が楽しめます。 温かな明るい音楽が楽しめると思います。 やはり元気な明るい音楽になりますね。
※全体的には、・・・NS-10Mは低域が薄く少し固めですが確かにナチュラル(リアル)です。SC-E535は中域が少し引っ込みますが低域から高域までバランスが取れた広がりのある音を楽しめます。SX-F3はやはり中域の響きがあたたかくきれいですね。SC-E535とSX-F3は長時間聴いても聴き疲れしません。D-202AXは中域が張り出した歯切れのいい元気な演奏が楽しめると思います。

スピーカーの周波数特性

スピーカーの周波数特性を測定して、耳で聴いた音と比較してみたいと思います。聴感上の違いがどのように周波数特性にあらわれているのでしょうか?

周波数特性を測定するプログラムや機材は下記の通りです。
【1】スペクトラムアナライザー:WaveSpectra
【2】音源:デンオン・オーディオ・チェックCD〈スペシャル・リファレンス・エディション〉 の周波数スイープとホワイトノイズ
【3】サウンドカード:ONKYO WAVIO PCIデジタルオーディオボード SE-150PCI(9,8000円)。SE-90PCIを先に購入してあるのですが、Line-InのあるSE-150PCIをYahooオークションで6,000円で落札しました。
【4】マイクアンプ:audio-technica マイクロフォンアンプ AT-MA2(20Hz〜20,000Hz(−3dB)) (4,654 円)。SE-150PCIにマイク入力があるのですが、AT-MA2を使ってみたくなりました。
【5】マイク:エレクトレットコンデンサーマイクロホン(ECM)WM-61A (20-16,000Hz)。一つ100円なのですが、フラットな特性ですね。

※スピーカーの周波数特性の測定の前に、まず、ONKYO WAVIO PCIデジタルオーディオボード (SE-150PCI)とCDプレーヤーの特性を確認しておきたいと思います。KENWOOD DPF-7002(改造済み)の出力を SE-150PCIのLine-Inを通してPCに取り込み、WaveSpectraで解析しました。

【無音時の周波数特性(録音レベル適当)】
SE-150PCIの性能

【ホワイトノイズによる周波数特性】
DPF-7002ホワイトノイズ

【周波数スイープによる周波数特性】
DPF-7002周波数スイープ
※次に、マイクアンプとマイクの周波数特性を確認しておきましょう。マイクアンプ AT-MA2の出力を SE-150PCIのLine-Inを通してPCに取り込み、WaveSpectraで解析しました。

【マイク未接続時の周波数特性】
AT-MA2の性能

【マイク入力に直接CDプレーヤーの出力を接続】
AT-MA2の性能
AT-MA2の性能

【マイク接続時の周波数特性】
↓50Hz(電源周波数)あたりのノイズが大きく、80Hzからなんとか信頼できそうですね。中高域は問題なさそうです。(念のため、マイクアンプの電源は9Vの電池を用いてみました。)
WM-61A接続時

※スピーカーの周波数特性は、ツイーターから50cmのところにマイクを置いて測定しました。スピーカーの音質と周波数特性を見比べながら聴いてみたいと思います。何かが分かってくると思います。

【ホワイトノイズによる周波数特性】
↓イコライザーをOFF。低域(80Hz)で落ち込みますが、それ以外は確かにフラットですね。世界一のモニタースピーカの理由がここにあると思います。
YAMAHA NS-10M ホワイトノイズ
↓イコライザーをON(このページの最初の表を参照)。低域の厚みが増し、また、聴き疲れしなくなります。
YAMAHA NS-10M ホワイトノイズ
↓低域から高域まで伸びて、確かにクラシックに向いていることが分かります。300〜500Hz(人の声)あたりが引っ込みますが、1KHzでは少し張り出してきます。
DENON SC-E535 ホワイトノイズ
↓中域の響きのある音色は200〜2KHzにある山のためでしょうか。低域もまあまあですね。
VICTOR SX-f3 ホワイトノイズ
↓元気の秘密は2Hzの山にありそうですね。
ONKYO D-202AX ホワイトノイズ

【周波数スイープによる周波数特性】
↓イコライザーをOFF。
YAMAHA NS-10M スイープ
↓イコライザーをON(このページの最初の表を参照)。
YAMAHA NS-10M スイープ
DENON SC-E535 スイープ
VICTOR SX-F3 スイープ
ONKYO D-2020AX スイープ
※ついでにサラウンド用のスピーカー(スピーカーマトリックスで使う)の周波数特性を測っておきました(ホワイトノイズで)。サラウンドの構成はこちらのページをご覧ください。⇒音響実験室

↓DENON USC-F07(インピーダンスは6オーム)。
DENON USC-F07 ホワイトノイズ
↓KENWOOD S-01S(能率はかなり低く88dBぐらい。インピーダンスは8オーム)。(マイクはフルレンジから10cmぐらいに近づけました。)
KENWOOD S-01S ホワイトノイズ
↓DENON USC-A300(能率は89dB。インピーダンスは4オーム)。(マイクはフルレンジから10cmぐらいに近づけました。)
DENON USC-A300 ホワイトノイズ

【周波数特性と線形動的システム】
周波数特性の数学的な意味について考えておきましょう。周波数特性の根拠になっているのは次の2つの重要な性質です。
【1】周期関数は正弦波を加算した形で表される。
【2】線形システムでは正弦波を入力すると、その出力も同じ周波数の正弦波になる。(線形システムとは、簡単に言えば、「重ね合せの原理」が成立するシステムのこと。)
この性質から、線形システムの特性は正弦波に対する振幅と位相の特性によって完全に決定されます。さらに、位相の変位が一定(線形位相)であると仮定するなら、システムは正弦波に対する振幅の特性、すなわち、周波数特性により完全に決定されることになります。 という訳で、線形という仮定の元に周波数特性はシステムで重要な意味を持つことになります。
そして、この仮定は決してばかげた仮定ではありません。普通、私たちは線形性(比例といってもいい)を前提に物事を考えているものなのですから。第一、アンプが線形でないとしたらどうでしょうか。入力を2倍、3倍にしたとき、出力も2倍、3倍とならないなら、また、位相が周波数によりめちゃくちゃになってしまうなら、一体いいアンプといえるでしょうか。やはり、いいアンプには線形性を期待するのはきわめて自然なことですね。同じく、オーディオシステムに線形性を期待するのは自然なことといえます。そうはいうものの、オーディオルームも人間の耳も線形ではないでしょう。であれば、少なくともCDプレーヤーからスピーカー出力の50cmのところまでは線形であって欲しいと思います。そして、周波数特性について考える時には近似的に線形システムと考えているということを思い出したいと思います。